徒歩・徒然


2014年3月14日(水)

映画 「魔女の宅急便」(2014年・日)

最初の本が世に出てから30年近くの年月が過ぎ、ようやく、この物語の世界が実写作品として生まれてくれました。それだけの長い時間、頭の中だけで存在していた世界なので、思い入れは相当の物なのですが、良い意味で期待が裏切られた感じがしています。

キキの故郷の村が険しい谷間に広がる村で、コリコはあまり大きくない街で、これほどの思い切った転換をしてしまうとは恐れ入りました。でも、そんなのに正解は無いわけですから。街のあの人この人が、良く知っている人たちが、次々に目の前に現れて嬉しくなります。さすがに「まにあわせやさん」は そのまま出てきませんでしたけども。

一所懸命に、四半世紀前の先輩作品(アニメーションのこと)とは違う事をやろうとしている感はありました。拾ってくるエピソードも極力かぶらないようにしていたし。ただ、そもそも、両者は比べようがありません。「あるところにキキという魔女の女の子が居て、13歳になったら修行に旅立つ。降り立った先は海辺の美しい街。空を飛ぶ事しか出来ない彼女は、色々な物を配達する仕事を始める」その筋さえ通っていれば、あとは、作家さんの想像力の赴くままに話が展開して行く。それが、この物語の魅力であり、角野さんの作り上げた世界のすごいところです。登場人物の皆は、性格付けもしっかりとした物が出来ているので、本当にそこに居るかのように生き生きと動き出す。彼らがそうやって動けば、こんな出来事が起こるだろうな、というのが、どことも知れない街の中で本当に良い空気なのであります。

ただ、見終わって、何かが足りないと ずっと モヤモヤした気分が抜けなかったのですが、ようやく その正体が分かりました。黒猫のジジが、ほとんど表舞台に立たないのです。キキとの会話も簡単にさらっと終わってしまう短い物が多いし、大事なパートナーの地位を下ろされてしまっているようで、ちょっと可哀想でした。皮肉屋ジジの絶妙の切り返しを、もっともっと見たかった。

 監督:清水崇
 原作:角野栄子
 脚本:奥寺佐渡子、清水崇
 音楽:岩代太郎
 撮影:谷川創平
 美術:岩城南海子
 出演:小柴風花、広田亮平、尾野真千子、吉田羊、筒井道隆、宮沢りえ ほか

エンドクレジットが終わるまで席を立たないように。
……なんだか、続編がありそうな終わり方をしていたんですが……まさかね。

過日


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written by tardy@k.email.ne.jp