徒歩・徒然

サマータイムを蒸し返す

〔この話については、続き(?)を書いています→2008年5月30日


2005年5月3日(火・祝)

3年ちょい前に サマータイムが分からん という内容の書き物をしました。ここに来て、やっぱサマータイムやろうじゃないかと言い出してる先生がたがいっらしゃるようなので、その話題を蒸し返したいと思います。

3年経ちましたが、僕の考え方は、基本的に あの頃と変わっていません。つまり、分からないのです。分からないままです。ちっとも分からない と力んでもいいぐらいです。利点が分からない。でも、欠点も分からない。今の日本に必要なのか、必要でないのか。

いったいサマータイムって何なんです?

(念のために繰り返し書きます。僕は分かりません。賛成とも反対とも言えません。どうしても どっちか選べと言われたら「いちいち時計を直すのはめんどくさいし今のままでも別に困ってないから 反対と答えますかね」というくらいのもんです。)


省エネ?

これが、やっぱり僕には分からないのです。どんな理屈で「省エネ」が出てくるのか。

(いきなり 3年前に くらだし様が書かれた文章を引用します。突然で申し訳ございません。そんな過去の文を持ち出して どうこう言うのも マナー違反かと思いますが、あの頃も今も 僕が ちっとも変わらず 分かってないことを示すには、これが一番良い方法かと思うもので……)

 外気温が最も低くなるのは4時頃ですから、その頃から活動してもらえれば、屋内よりも外気のほうが涼しい状況が考えられます。簡単な省エネの手法として提案されている「夜間換気」です。その「夜間換気」を導入する土壌の一つとして、「夏時間」があります。ちょいと早起きして換気すれば、涼しい風が入る、という訳です。6時起きを4時起きにする理由はなくても、5時起きなら少しは、という訳です。外気導入では、虫が入るとか、効率が良くないとか、問題が多いんですが。

朝が涼しいのは良く分かるのですが、それが「一時間時計を進める」ことに どうしても結びつかないんです。「エアコンを切って窓を開けて寝ましょう」では いけないんでしょうか?(僕は 夏の間は窓を開けっ放しにして網戸にして寝ますから、夜間は換気しっ放しです)

朝、気温が一番低いあたりは 推移のグラフの“底”に近いところですから、グラフの 所謂“傾き”は そんなに大きくありません。つまり、1時間早くても気温はそれほど下がらない(僕の見つけた資料によれば、8月の平均で示すと、東京において 午前5時と 午前6時の気温差は 0.5℃くらいのようです)。冷房をつけようと思うような気温であれば 1時間前にしても つけてしまうだろうし、我慢できるなら 1時間後だって我慢できる気がします。

 朝と夜の差し引きでは大きく減ります。例えば、元々7時起きの家庭が夏時間で実質「6時」起きになったとしても、6時にはすでに明るいですから照明は点けなくて良いのです。夕方、照明を点ける時間が実質1時間早くなっても朝の貯金が残ります。

 太陽が昇っている時間の活用を促す上で、夏時間が有効なのです。

 そして夜、19時は「実質18時」ですから、6〜8月ならばまだまだ明るい時間なんです。つまらない例ですが、高校野球でナイターになる時間が1時間遅くなります。こんなつまらん例以外でも、1時間で結構稼げるのではないか、というのがサマータイムの発想です。労働時間が固定されがちな第三次産業の人口が増えるほど、夏時間 が有効に機能するはずなのです。

すみません。丁寧に説明して頂いたのに申し訳ないのですが、やっぱり僕には「大きく」減る理屈が分かりません。なるほど、電灯を点ける時間が 夕方 1時間減るのは、朝に相殺されるのではないかもしれない。しかし、夕方 電灯を点けなくてもいい時間が増えるということは、その時間は 太陽が まだ 燦々と照ってるということですから、電灯を点けないのを打ち消して余りある冷房がガンガンについてる気がするのです。1時間で結構稼げる……のかなぁ? というのが正直なところなんです。すみません。

試算では、日本の年間の総エネルギー消費量(原油換算)の約0.1%に当たる85万キロリットルが節約できるという結果だそうです。これが 単なる誤差みたいな数字に見えてしまい、計算の仕方によっては簡単に“増エネ”へ引っくり返るんではないかと思ってしまうのは、僕が素人だからでしょうか?


体調を崩す?

いきなり1時間も時計がズレてしまうと、体が慣れるのが大変だといいます。健康を害する、とか、寿命が縮むという人までいます。

本当でしょうか?

僕は仕事柄、出勤時間が日常的に 2時間から11時間の幅で 毎日ズレています。睡眠の取れる時間も それに伴ってバタバタ変動します。そんな無茶苦茶な日常でも、職場の人たちは何とか生活していますし、取り立てて ウチの職場の人が早死にだとも聞きません。

現在サマータイムを実施している国々の皆さんから そういう話が声高に聞こえてくることも ないように思えます。たかだか年に 2回、それも 1時間程度なら、そんなもんさと慣れてしまえば 大して苦にならない気がするのですが。


太陽が今より1時間遅くまで昇ってた方が良い?

あちこちで見られるのが、「英語圏では “Daylight Saving Time” と呼んでいる」というもの。これを言葉どおりに受け取れば、お日様の昇っている時間を大切に使いましょうということでしょうか。しかし、そもそも余暇の過ごし方は人それぞれであるはずです。明るい日差しの下でスポーツや野外活動を楽しむ人も大勢いらっしゃる。一時間 日暮れが遅くなれば、もっと たくさん楽しめます。が、夕涼み とか 蛍狩り とか 花火大会 とか 盆踊り とか 星空を眺める とか、暗くなってからが本番であります という夏の風物詩も多い。それらを楽しむ人に向かって 一律に 始めるの一時間遅くしてね と頼むのも無理があるでしょう。

個人的には、今の7時から8時ぐらいに暗くなるというのは 丁度いい辺りに位置していて、陽の光を楽しむのと 暗くなってから楽しみ始めるのと 両者の間で 上手く折衷できていると思うんですが……

冬至の頃 5時間ぐらいしか太陽が昇らない ストックホルムなんかとは違います。日本には、夏の間「日常的に日光浴をする」という習慣は ない。そんなですから 僕は “Daylight Saving” と言われても ピンと来ないのです。1時間 時計をズラしてまで 太陽の光を浴び続けなくては いけないんでしょうか?


労働強化? 残業が増える?

まだ明るいじゃないか、もっと働けぃ! ……となるということでしょうか。時代錯誤の そんな職場もあるのかもしれませんが、そんな職場は すでに今だって無茶苦茶な残業を強要されているのでは? 管理がしっかりしている職場であれば、そういう極端なことにはならないと思います。

もちろん、陽の光が 業務上重要な要素になっている仕事は 日暮れまでの一時間ぶん仕事が増えることになりますが、そのような職種って 何があるでしょう?


ライフスタイルの変化?

余暇時間が増えるという理屈は全く分かりません。1日は24時間のままだし、ドラえもんの「3倍時計ペタンコ」を貼るように 人間が1時間ぶん早く動けるようになるわけでも ありません。(知ってる人いるのか?)

時間軸を1時間ずらすことによって、変わることは沢山あると思います。なきゃあ おかしい。でも、平日の1日の中に余暇の時間を積極的に作って楽しむ、という上手い時間の使い方をするのと 時刻を1時間ずらすことが、どうしても結びつきません。働く環境であるとか住環境であるとか通勤環境であるとか、その辺りのことを変えなければ ライフスタイルまで変化させるのは難しいのではないかと思います。

そのきっかけとしてのサマータイムなんだ、と言われても、きっかけ与えるためだけに こんな大々的なことをせねばなんねぇのか、どうしてよ、という疑問は消えません。


カネがかかる? 手間がかかる?

導入のためにかかる費用は 何十億円 何百億円 あるいは何千億円 なんていう話も良く見ます。

しかし、所謂「初期投資」だけで済む部分も沢山あるわけで、毎年毎年 それだけのカネが吹っ飛んでいくわけでもありません。いっちょ やってみっぺ、とか言って始めて、やっぱ無理みてぇだから 戻すべ、とか言って元に戻す。これだけでも夥しいカネが動くわけで、低迷している日本経済には良い薬かもしれない?

時計を合わせなおす手間のことも いろいろ言われています。そんなに手間ですかね? 確かに携帯電話の説明書を隅から隅まで読む気はしないけれど、時計の合わせ方の項目を必要なときに見るぐらいは なんてことないと思います。これは、弱者のことを何も考えてない意見として却下されちゃうのでしょうか。

て言うか、我が家には そんなに時計が無いんですよ。電子レンジや冷蔵庫は旧式だし。電話機も時計は付いてないタイプのやつだし。デジタル放送のチューナーは(たぶん)勝手に合うので問題なし。腕時計は昔ながらのアナログですから、竜頭を引っ張り出して回せば良し。そんな感じなんで。


リンク集(ウソ)

そんなわけで、いろんなサイトで いろんなことを書いてあるのを読みました。読んだのに相変わらず分からないのは、僕の頭が悪い以外に無いでしょう。皆さんにも、是非、書いてあることを読んで、分かったことを僕に教えて頂きたいのです。で、それらのサイトにリンクを張ってみたいと思うのですが、リンク先の内容や 並べた順番によって 僕の立場(分からないので賛成とも反対とも言えない)を誤解されて 反対派だの賛成派だのと決め付けられても困りますので、各種サーチエンジンにお任せしたいと思います。

また、ぜひ皆さんで実のある議論をして頂きたい。いえ、議論とまで行かなくても、他人事のように思わず、自分のこととして考えて頂きたいのです。時計がズレることは、どんな人にも等しく影響のあることです。東京も地方も、大人も子供も、金持ちも貧乏も 関係ありません。世間に与える影響は、途方も無く大きいのです。サマータイムの効用は良く分からないけれど、ロクに宣伝もなされず、意見を吸い上げることもせず、一部の先生がたの意思だけで決めてしまえる類のものでないということは分かります(非現実的なことを言いますが、全国民に投票をしてもらってもいいくらいだと思っています)。

僕が気になっているのは、そんなに大きな影響があることなのに 密室での議論をしただけで事が進んで行こうとしている点です。現にココに、分からない分からないと訴えている一人の間抜けがいます。こういう人が他にいないとも限らないでしょう。そういう人たちを置き去りにして、制度だけ整えようとするのは、なんか違うんでないですか?

とにかく、分かるように説明して欲しいのです。僕が言いたいのは、結局それです。もし、とりあえず何かを変えたいだけなんだ とか、経済団体から圧力があるんだ とか、アメリカから採用しろと迫られてるんだ とか だったとしても、後から間に合わせで作ったような変な大義名分を並べないで 正直に言ってもらいたい。それなら、明確に賛成か反対か意見が言えますから。そういうのが理由であるなら それはそれでいいでしょう。しかし、今のままでは、賛成も反対も出来ない。そんな説明も無しに、いきなり「今年の夏から 時計を1時間進めましょう!」なんて、身勝手も甚だしい。お願いします、皆さん。


2005年5月5日(木・祝) 追加

さて、分からないまま時は過ぎていきます。

サマータイムは高緯度の国のもの とか、高緯度地方でやるなら意味がある とかいうのが 一般常識のように語られていますが、実は、この理屈も僕には良く分かっていないんです。

次に挙げるのは、サマータイム本場のヨーロッパ各地の都市における 夏至の頃の日の出と日の入りの時刻です。「夏の時刻」を一番端的に表しているのが夏至の頃のものなのではないかと思って並べました。一口に夏至と言っても あいまいさが残りますから、ずばり、今年2005年6月21日の時刻を調べてあります。

ヨーロッパ各地の日の出入り(2005年6月21日)
都市名日の出 - 日の入り (DST)日の出 - 日の入り (ST)「昼」の継続時間
Stockholm3:29am - 10:10pm2:29am - 9:10pm18時間41分
Москва4:43am - 10:20pm3:43am - 9:20pm17時間37分
London4:42am - 9:20pm3:42am - 8:20pm16時間38分
Frankfurt5:14am - 9:36pm4:14am - 8:36pm16時間22分
Paris5:45am - 9:57pm4:45am - 8:57pm16時間12分
Roma5:34am - 8:48pm4:34am - 7:48pm15時間14分
Madrid6:45am - 9:49pm5:45am - 8:49pm15時間04分
Αθήνα6:01am - 8:49pm5:01am - 7:49pm14時間48分

Sunrise, Sunset Calendars and Local Time というサイトで調べたものです。表の左が現行の時刻、つまり、Daylight Saving Time (DST) が施行されている状態のもの、右側が それを やめちゃった場合のもの(ここでは前述のサイトに倣って Standard Time (ST) と呼ぶことにしました)です。
どういう順番で並べようか迷ったんですが、「昼」(日の出から日の入りまで)の時間が長い順に上から並べることにしました。これは、大体 緯度の高い順にも一致するのではないかと思ったからです。

注意して頂きたいのは、ここに書いたのは あくまで「日の出と日の入り」の時刻であることです。太陽の上端が地平線上にかかる時刻で定義されているそうです。つまり、この時刻の前後にも明るい時間が しばらくあります。

で、僕が疑問に思うのは、表の右側の時刻で何か問題があるの? ということなのです。Daylight Saving ったって、夜の8時とか9時とかまで明るきゃあ、それで充分なんじゃないですか? さらに それから 1時間も延ばさなくっても。まあ、ストックホルムの 午前2時半に日の出というのは さすがに早すぎる気がしますから、もう ちょっと遅くしようよ っていう気持ちも分からんではないですが……でも、DSTにしたところで、結局、普通に起き出す時刻の はるか前から明るくなってることに変わりないんではないかしら というのが正直な感想です(ストックホルム以外の都市にしても)。

(こうして時刻を並べてみると、夕方の明るさが どうこう より、日の出を ちっと まともな時刻に近付けようじゃないか、という感じなのかなと 思えないこともないですね。なお、マドリードが ちょっと変なのは、西に位置しているにもかかわらず 地続きのフランスに時間帯を合わせているからだと思われます)


ついでと言ってはナンですが、さっきのと同じ表を 日本で作ってみましょう。

日本各地の日の出入り(2005年6月21日)
都市名日の出 - 日の入り (DST)日の出 - 日の入り (ST)「昼」の継続時間
札幌4:55am - 8:18pm3:55am - 7:18pm15時間23分
東京5:25am - 8:00pm4:25am - 7:00pm14時間35分
大阪5:45am - 8:14pm4:45am - 7:14pm14時間29分
那覇6:37am - 8:25pm5:37am - 7:25pm13時間48分

こちらは 各地の日の出・南中・日の入り時刻(国立天文台) のページで調べました。日本の場合は、右側が現行の時刻になりますね。

で、分からないのは すでに書いている通りです。左側の時刻に移さなければいけない理由は 何なのでしょうか?(個人的には、夜の8時過ぎまで太陽の光があるなんて 考えただけでも暑苦しいなぁと思います。これが反対の理由になるのかどうかは定かではありませんが)


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