ストックホルムの3日間


旅行 1日目 (6月24日 日曜日)

いざ、成田へ

良く言われていることではありますが、成田空港へ行くのも一仕事です。僕は現在 秋田に住んでいますから、東京へ出て行くだけでかなりの出費になります(今回、往復で3万円超)。時間も掛かります。

旅行社から貰った書類には、出発時間の2時間前集合 『時間厳守のこと、遅れた場合予約を取消される場合があります』 などと、脅されてるような気になる文句が書いてあります。2時間前ということは、9時40分。そんなに早く成田へ行けって?
とりあえず、前日に実家入りし、朝早く“総武線の快速”で行くことにしました。「成田エクスプレス」や 京成の「スカイライナー」で行く必要など、ない。
東京駅の地下ホームからは、僕が乗るつもりの列車の直前に、「成田エクスプレス」が出て行きました。皆さん、荷物をいっぱい抱えていらっしゃいます。そんな中、僕は、いつも愛用のカメラザックひとつ。今回、寝袋を持って無い分、国内旅行の時よりも荷物の量が少ないです。だって、あんなでっかいスーツケースなんか要らないもん。どうせ向こうには3日間しか居ないんだし。

途中、うつらうつらしていたら、いつの間にか着いていました。空港第2ビル駅。ここから、「第2ターミナル3階・Gカウンター5〜9番」へ向かいます。ここで、航空券を受け取る手はずになっているのです。旅行社から来た一枚のA4判の紙が「航空券引換証」。ホントに これだけで大丈夫なのかな。

3階へ着くと、広大なフロアの中に人が うじゃうじゃ していました。
「Gカウンター」ってのは何処だ? ようやく見つけた。「5〜9番」ってのは何処だ? ぐるーっと回り込んで、ようやく辿り着きました。
紙とパスポートを差し出すと、カウンターのお姉さんが4枚組みになっている航空券を渡してくれました。往き2便、帰り2便、で合計4枚。大層な感じがします。現地滞在たかだか3日 の旅行で。

チェックインは1時間半前からになります、と言われます。同じGカウンターの違う一角に「サベナ」のカウンターが出来るので、そこでチェックインしてくれとのこと。その違う一角への入り口では、荷物の検査らしきものが行われていて、すでに長蛇の列が出来ています。その列の後ろについて、順番を待てばいいのか。しかし、まだちょっと時間があるよな。

両替 1回目

辺りを見回して、目に入って来たのが銀行の窓口です。(三井住友銀行 本店営業部 成田空港出張所 だそうです)
そうだ。今日、あっちに着くのは遅いから、両替とか出来ないかも知れないな。今やってしまうか。
(結局、この判断は誤りでしたが、それについては後で。こういうところで、シロウトは差をつけられてしまう)

「外貨両替計算書」というのに、両替を頼む円の金額と、外貨の種類を書き込みます。米ドル・英ポンド・仏フラン・独マルク なんかの有名どころは すでに印刷してあってチェックを入れるだけで良いのですが、我が目的地スウェーデンのクローネ(とカウンターには書いてありましたが、“クローナ”が本当なのかも)は、空欄に自分で書き込まないといけません。やれやれ。

窓口へ。
とりあえず、2万円ほど。計算書と一緒に差し出すと、奥でゴチャゴチャやってからスウェーデンのお札がやって来ました。と同時に1058円のお釣りが戻って来ました。どうやらクローナ硬貨は用意されてないらしく、端数が払えないので その分 返してよこしたようです。ここでの換算レートは 1SEK=13円53銭。手元には、1400SEKが来ました。一気に数字が減って貧乏になった気分。

搭乗手続き

先ほどの列の一番後ろにくっ付いて、順番を待ちます。
入り口の所に行くと、僕のすぐ前にいた人が、「サベナは まだだから」と係員に追い返されました。は? 時計を見ます。10時10分は、とうに過ぎています。えー? さっきのお姉さん、1時間半前からって言ったよ。
僕の順番になって航空券を見せます。係員は、一瞬、前の人にしたのと同じ対応をしようとします。「11時40分のブリュッセル行きなんですが……」と言うと、「え?」と困惑した様子。12時台にも便があるんだかなんだか、頭の中がごっちゃになっているみたいです。とりあえず僕は通してもらえました。

サベナ・ベルギー航空 と表札の出ているカウンターに並び、チェックインを済ませます。

「お預けになる荷物は?」「ありません」
多分、珍しい方の お客なんだと思います。
Lost Luggage (荷物行方不明)が怖いから、ってのも確かにありますが、そんなに大荷物を持ってく必要を感じないんでね。いいじゃないですか。

窓際の席にしてもらいました。トイレへ行ったりするのに気を使うとか、色々あるようですが、外の景色が見たかったんです。せっかくだもの。

飛行機はエアバス

金属探知機を通って、手荷物検査を済ませ、出国審査でパスポートにスタンプを押してもらって。
免税店で買い物なんてのは省略して、とっとと飛行機の所へ向かいます。

途中、建物の間を移動するのに、黄色のモノレールみたいなやつ(正式な名前は知らない)に乗らなきゃいけなかったりして、けっこう驚きました。

ゲート、D94。Sabena SN208。行き先、Brussels
そばの椅子に腰掛けて ぼんやりしているうちに、搭乗のアナウンスがありました。

席は、25K。ちょうど、右の主翼の上です。隣の人が既に入っていて、ちょっと よけてもらって席へ。ほどなく出発となりました。これから先、11時間50分。長ー。

客室で

客室乗務員には、日本人の方が4人いらっしゃいます。が、ベルギー(だと思う)の方もいて、日本語と英語の両方で飲み物や食べ物を勧められます。

“Would you like some drinks, sir?”

うわー、“sir” なんて呼ばれちゃったよ。「ノー、サンキュー」。あれ、これでいいんか? (不必要な緊張)

スウェーデン上空

ブリュッセル到着まで あと2時間程といった地点で、窓の下に島が見え始めました。

あれ?
ひょっとして……!

おい、あれは スウェーデンの Gotland じゃないか?!

座席の前にある小冊子の地図を見ると、果たしてその通りでした。実は、今回の旅行でも時間と足と宿が許せば、ぜひ訪ねてみたいと思っていた島なのです。バルト海に浮かぶ夏のリゾート地ということで、この時期、宿の予約などは なかなか取れないようですが、中心の街 Visby を始め、本当に綺麗な所だと聞いています。
しかし、Stockholm - Visby 間の飛行機の予約を日本でどうやって取ったらいいか分からず、泣く泣く断念したのでした。
その島が、今、眼の下に大きく見えています。「今度は 絶対 行くからなー」

それよりなにより。
目的地の国が、今まさに そこにあるのは本当に悔しい。あぁ。何が悲しゅうて ここから2時間先の土地へ行って戻って来にゃあ ならんのですか。ここで降ろしてもらうわけには行かんかね。

ブリュッセル国際空港

(英語だと“ブラッセル”という発音になるみたいなんですが、ここは英語の国じゃないし、日本ではブリュッセルの方が通りが良いのでブリュッセルと書きます)

ほぼ時刻どおりに到着。現地時間で、夕方の4時半すぎ。日本は、7時間の時差があるので、ほぼ真夜中です。
12時間弱 乗り続けた飛行機を後にして、乗り換えにかかります。しかしこの、ただ“飛行機を乗り換える”だけの行為ですら、初めてのド素人には緊張を伴うもので。

まず、どこへ行けばいいのか。
サベナのサービスカウンターのある場所は、機内で ご丁寧にも ビデオまで使って説明してくれたんですが、実際に空港へ降り立ってみると、自分が今どこに居るのやら、さっぱり分かりません。
皆が歩く方へと付いて行くと、ひとつ、カウンターがありました。うむ。ここで、搭乗手続きをすればいいんだな。

しかし、この係の人、多分ベルギーの人だよ。ひえぇ。前の人、英語でやりとりしてるよ。何言われてるか分かるかな。
戦々恐々とする中、僕の番になりました。チケットとパスポートを差し出し、チェックインしてもらいます。何か言われます。どうやら、預ける荷物があるか訊いてるみたい。今 背負ってる これだけです。と言いたいんだがな。どうする?
「あー、アイ ハブ オンリー ディス ワン」
こんなんでいいのか? あ、でも、なんか、言いたい事は分かってもらえたみたい。なら、いいや。
その後、ゲートはC34です、その先の階段を上がって行って下さい、みたいなことを説明されました。言ってることの半分ぐらいしか聞き取れてないですが、とりあえず、相槌を打っておきます。アイ シー。どこへ行けばいいのかが分かれば、あとは何とかなります。

最初に行き当たった免税店が並んでるフロアで少しのんびりした後、出国審査のゲートへ。EUの人と そうでない人とで区別されてます。係官にパスポートを差し出すと、
“You go to Stockholm?”
お、聞き取れたよ。「イエス」
ところが その後がダメ。何か言われたけど分からない。きょとんとした顔をしていると、また言ってくれました。
“Sightseeing? Business?”
あ、観光です。単なる。「サイトシーイング」。向こうもこっちも英語圏の人ではないので、会話は斯くの如く、単語の組み合わせのみで終始しました。ペタッと一つスタンプを押されて、そこは終了。


トイレ騒動 (1) − 便器が でかい −

ブリュッセルの空港で、トイレに入りました。小用を足そうとした所……

小便器の位置が高い!

我々と あちらの方々とで体格が違うとは言うものの、ここまで違っているものでしょうか。
僕が前に立って、股の所の位置がギリギリでした。僕の身長は、日本人の平均を少し上回る程度のはずで、日本の男性の半分くらいは、あの便器の高さに届かないのではないでしょうか?

ついでに、座る方の部屋にも入ってみました(なんたって時間が やたら あるもんで)。こちらも、やはり でかい。腰を下ろしたら、何だか体が宙に浮いてるような気がしました。
向こうの人は、足が長いんだなぁと、しみじみ思ってしまったことでした。

(帰りに分かったのですが、どうやらこの空港、トイレによって置いてある便器のサイズが違うようです。日本にあるのと同じようなサイズの物が並んでいた所も ありました。)


一路、スウェーデン

ストックホルム・アーランダ空港へ向けて出発です。Sabena SN2299
さっきの便には日本人が沢山乗っていましたが、今度は、僕も含めて3人だけ。残りは全部、西洋の方々です。おそらく、ほとんどはスウェーデンの方でしょう。やっぱり でかい人が多いなぁ。搭乗口へ向かって並んでいると、自分が子供になった気分です(少々 大袈裟)。

さっきの便では日本語のアナウンスもしてくれましたが、もう、そういうわけには行きません。しかし、英語のアナウンスだけは何となく分かるもので、燃料の追加をするから出発がちょっと遅れる、という事情は掴めました。
それにしても、ベルギーの客室乗務員の方は大変です。ドイツ語・フランス語・英語と、3つの機内アナウンスを順番にしていました(ベルギーは、フランス語地域・ドイツ語地域・オランダ語地域 と、3つに分かれているそうです)。スウェーデン語のテープを流そうとしたところ故障で上手く聞こえず、「私はスウェーデン語が話せませんので英語でご了承を」とお詫びするハプニングも。

再び、スウェーデン上空

途中、機内食を食べ終わった辺りでウトウトしてしまい、気が付いたら、飛行機はストックホルムの近くまで来ていました。

窓の外に、初めて見るスウェーデンの大地が広がっています。これが素晴らしかった!
まさに、水と緑の国。午後9時半を回って ようやく暮れかけた陽射しに、湖沼と周りを囲む陸地が綺麗に映えていました。この時の感激は、ちょっと言葉で書けません。着陸する時に、少し滑走路が込んでいたらしくて上空を何度か旋回しました。おかげで、じっくりと風景が楽しめました。機長も「いい景色が見えますよ」と気を利かせたアナウンス。

入国は?

着陸。飛行機を降り、ゲートへ向かいます。さて、ここで例によってパスポートが要るんだろうなと思って用意しました。
が、荷物受け取りの場所(僕は用なし)を通り過ぎると、みんなさっさと その先のカウンターを素通りして出て行くではありませんか。え? と思いながら、僕もついて行くと、呼び止められもせず、あっさりとロビーへ。あれま。
どうやら、EU圏内を結ぶ便ということで、国内線と同じような扱いになっているみたいなのです。こうして、記念すべきスウェーデンの地への第一歩は、戸惑いと共に過ぎ去って行ったのでした。

両替 2回目

ロビーに辿り着くと、FOREX のカウンターが まだ営業していました。
FOREX というのは、スウェーデン国内で店舗を展開している、いわば「両替屋さん」です。外貨と Sveriges Krona の両替をはじめ、各種の両替を非常に良心的なレートと手数料で行ってくれる、大変ありがたい お店(?)です。黄色い看板が目印。空港・駅・観光案内所など、観光客が行きそうな所には必ずあります。

時刻は、現地時間で午後10時を回っています(日本との時差は7時間なので、日本時間では翌日の午前5時となります)。こんな遅くまで店が開いているとは思わなかったので日本を発つ時に両替をしたわけですが、ちょっと早まったようです。空港内は ほとんどの店が営業を終えてひっそりしていましたが、FOREX だけは、この時刻まで ちゃんと開いていました。

せっかくですから、ここでも両替をしてみることにしましょう。
日本で2万円替えたから、ここでは1万円くらいでいいか。窓口の前には、日本の銀行のような紙に記入する机などはありません。どうやら、書類なんかは要らなくて、そのまま おカネを渡せば良いようです。日本の銀行もこういうシステムにしましょうよ。
窓口に一万円札を差し出したら、“Japanese to Swedish?” と訊かれました。当然イエス。
しばし待つと、830krが手元にやって来ました(スウェーデン国内に入ったので、これからは“クローナ”を“SEK”ではなく“kr”と書きます)。
レシートを見ると、どうやら20krを手数料として取られているみたい。ということは、計算すると……1kr=11円76銭くらいで両替してくれたことになります。おいおい、日本でやった時と2円近く違うじゃねーか。なぜ? 飛行機に乗ってる間に2円も円高になったんじゃあるまいに。こんなことなら、全部こっちで両替するんだった。

〈ひとこと〉
 スウェーデンでの両替は、ゴチャゴチャ考えずに FOREX を利用しましょう。それが結局、早くて手軽でお得です。
 ただし手数料が高いので、小額を何度かに分けて ではなく、いっぺんに それなりの金額を替えた方が良いでしょう。
 (治安の良い所なので、多少のカネは持ち歩いても危なくないです。たぶん)

アーランダ空港―ストックホルム中央駅

アーランダ空港(Arlanda flygplats)は、ストックホルムの中心街から北へ40kmほど離れた所に位置しています。周りには、農場や森や野原や沼や湖や、郊外の住宅地や工場や。というわけで、これから何とかして市街地へ向かわなければいけません。その交通手段については「基本的にはバスかタクシー」という情報を、事前に書物で得ていました。

ところが、ロビーに出たところで、正面の壁に “Arlanda Express” という大きな看板が出ているのを見付けました。黄色い電車の写真と、StockholmCentral20minuter とかの文字が見えます。スウェーデン語だから良く分かんないけど、これは恐らく「ストックホルム中央駅まで20分で行ける Arlanda Express という鉄道」があるということなのでは。うん、きっと そうに違いない。それに乗って行ってしまおう。
とりあえずストックホルム中央駅まで出て、あとは地下鉄(Tunnelbanan)に乗って目的地まで行くのが、どうやら最も確実なので。
Arlanda Express は、既存の国鉄の線路を上手く利用して、ごく最近 走り始めたみたいです)

さて、案内表示(上に白い文字でスウェーデン語。下に黄色い文字で英語)に従って歩いて行くと、通路の途中に切符の自動販売機がありました。販売機の色から見ても、Arlanda Express の乗車券を買う所に間違いありません。画面がついていて、そこに何やら表示されています。が、当然スウェーデン語で、何が何だか。どうやらタッチパネルになっているみたいなんですが。どこをどう押せばいいのか。
良く見ると、画面の下の方にイギリスとドイツの国旗をあしらったボタンが表示されているのが分かりました。お。ひょっとしてこのユニオンジャックみたいなのを押すと、英語表示になるんじゃないかい? 正解。よし。これなら、なんとかなるぞ。
ストックホルム中央駅まで片道。大人ひとり。値段は140kr。およそ2000円弱ですか。20分乗って2000円……ちょっと高い気がするけれど。ま、迷子になるよか ましだ。

切符は買いました。次は乗り場を見付けなければ。
自動販売機のすぐ後ろに、下へ向かって伸びているエスカレーターがありました。天井には、発車時刻を示しているらしい表示板もあります。あと10分くらいで出るらしい。で、そこのエスカレーターへ乗ろうと足を踏み出すと、動き出した階段は こっちへ向かって登ってくるではありませんか(向こうのエスカレーターは、人が近付くと動き出すようになってるのが一般的みたいです)。ありゃりゃ。ここからは下りられないということですか。じゃ、どこから行けばいいんだ。
案内表示を頼りに進み、隣の建物まで行くことになりました。途中、どこかの人(多分、スウェーデンの方じゃありません。中近東か中南米の人だと思います)に、Terminal 4 は何処ですかと訊かれました。そ、そんなことを言われても。私は たった今、この空港に初めて来たところなんですよ。仕方がないから、二人で天井からぶら下がってる案内表示をきょろきょろ見回し、ようやく “Terminal 4 を見付けました。あ、あっちだあっちだ。あっちですよ。飛行機に乗り遅れそうになっていたのでしょうか、その人は、ものすごい勢いで走って行ってしまいました。

Terminal 4 は見付かったけども、Arlanda Express の乗り場は どこなのさ。途中、ちょっと表示を見失ったりもしました。夜遅いので、建物の中を往来している人もほとんど居ません。そしてやっと、エレベーター(Hiss)を見付けました。これで地下へ下りて行けばいいらしい。乗り込んで、地下一階のボタンを押します。
扉が開くと、そこはもうホームの上でした。あれま。改札とか、そういう ややこしい物は ないんですね。話には聞いていましたが、これが あちらの方式なんですな。ホームの上にも切符の自動販売機がありました。
ホームには、けっこう人が居ました。表示を見ると、あと2分で電車が来ると出ています。地下ホームなのですが、天井が高くて圧迫感が全然ありません。ちょっと ひんやりした空気が流れています。
そのうちに電車がやって来ました。看板で見たのと同じ、黄色の電車です。羽田や成田と同様に、ここでも二つ駅があるようです。やってきた電車には、すでに座っているお客さんがいました。

新しい電車なので、乗り心地は抜群でした。窓から見える景色、日本とはやはり一味違います。なんと書けばいいか分かりませんが、とにかく、違う国に来たことが、徐々に実感できてきました。
そのうちに、乗務員の女性がやって来ました。スウェーデン語と英語で車内に声をかけます。検札のようです。ひとりひとりから、切符を受け取ってチェックしています。「ありがとう」という意味のスウェーデン語 ”Tack så” (タック・ソー と書くと近いです。アクセントは「タック」の方に)を初めて生で聞けました。僕は、“Thank you very much, sir.” と英語で言われましたが。

電車は、20分経って時刻どおりにストックホルム中央駅へ滑り込みました。

Central Station
(写真は、翌日の夕方に撮影)

どうやって地下鉄に乗ればいいんだ

中央駅に降り立ち、案内表示を頼りに地下に下りて行きました。さすがに、人が沢山います。東京のラッシュなどとは比べようもありませんが、それでも、空港からここまでの道中では、こんなに人は 溢れていませんでしたから。やっと、一国の首都に降り立ったといった感じです。

地下鉄の改札らしい所に来ました。ここで、一つの問題に当たりました。どこに入って行ったらいいか分かんないんです。改札の奥に案内表示が見えるのですが、地下鉄の路線に日本のような「なんとか線」という名前が付いてないので、僕の乗るべき路線のホームに行くのに、本当にこの改札を入って行っていいのかが分からない。
(あとで分かったことですが、どうやら終点の駅の名前で路線の区別をつけるようです。そう言えば、そんな話を聞いたことがあるような気も)
それに周囲には、切符を買うようなところも見当たりません。人の流れを見ていると、改札の脇にあるブース(?)のようなところで買ってるみたいですが。なんて言って買えばいいんだ。

さて どうしよう。とりあえず、なにか手がかりを掴もうと、壁に掛かっていた路線図を眺めていました。
すると、一人の女の子が話し掛けてきました(はじめ、自分に声を掛けて来てくれてるのに気付かなかった)。小学生ぐらいの子でしょうか、犬を連れています。どうやら、困った顔で路線図を眺めている僕を、放っておけなかったみたいです。しかし、スウェーデン語なので何を言っているのか分かりません。大変申し訳ないのですが、僕はスウェーデン語は分からんと、早急に承知してもらう必要があります。
へどもどしながら、スウェーデン語は分からないと言うと、英語に切り替えてくれました。本人は、英語はまだ上手く喋れないと言ってましたが、日本人の僕に言わせて貰えれば、外国の言葉を あそこまで喋れれば充分ですよ。僕も含め、日本人の大人の大半は、あなたよりずっと英語が下手くそです(英語だけでなく、外国語は押し並べて)。
まあ、それはともかく、Hornstull という駅まで行きたいと、路線図を指差しながらどうにか伝えました。そこが、ホステルの最寄駅なのです。すると、同じ路線の先の駅まで乗って帰るから、一緒に行けばいいと言ってくれました。そこの改札から入ればいいようです。まさに、天の助けでした。ありがとう、ありがとう。
しかし、まだ問題は残ってます。切符どうやって買えばいいの? それをどうにか聞き出そうとしていると、その子の母親らしき人がやって来ました。お母さんは、当たり前のように、英語をぺらぺら喋ります(“Do you speak English?” と訊かれて、「あー、リトル……〈少しだけ〉」と答えるしかなかった僕の気持ちを ご想像下さい。あぁ、情けない)。娘から事情を聞いた彼女は、僕の要領を得ない質問にも親切に答えてくれました。やはり、切符は改札口脇のブースで買うらしい。行き先を告げれば それでいいようです。

3人ひとかたまりになって、改札口へ向かいます。定期券だか何だかを持っている人たちは、ターンスタイル(って言うんでしょうか?)をそのまんま通り抜けていきますが、切符を持たない人々が脇のブースの所に行列しています。
僕の番が来ました。なんて言っていいか分からないので、中の女性に駅名だけ告げました(発音の仕方を女の子に教わっていて良かった)。“You want to go Hornstull?” と訊き返されます。はいと答えると、切符を渡されました。

地下鉄の切符 最低区間(最低区間ぶんなので二枚綴りになってます。本物は、一枚が縦3cm・横5.4cmほど)

一枚の切符が8kr。地下鉄の料金はゾーン制を採用していて、同じゾーンの中なら最低区間分の料金(なぜか、切符二枚)で、隣のゾーンに行くごとに切符の綴りが一枚ずつ増えていく方式のようです。つまり、隣のゾーンまで行くなら3枚で24kr、そのまた隣に行くなら4枚で32kr、ということ。買って1時間以内なら、何度でも使えるのだとか。

僕の降りる駅は5つ目。同じゾーンの中なので、最低料金区間です。16krを払うことになるのですが、緊張していて財布の中身をろくに確かめずに100krのお札を出してしまいました。今思えば、20krの札を出しとけば よかった。1krの硬貨は無いかと言われましたが、ここまで買い物など全然していないので10kr硬貨までしかありません。それでも、嫌な顔一つせず、お釣りをくれました。どうも。

そんなこんなで、無事 地下鉄にも乗れ、目的地まで行くことが出来たのでした。

地下鉄路線図 抜粋

ホステルへチェックイン

地下鉄 Hornstull駅から地上へ出ます。出口の改札では、切符を出したりする必要はなく、そのまま通り抜けます(みんなが どんどん出て行っちゃうので、唖然としてしまいました)。
どこの出口から出ればいいのか良く分かりませんでしたが、適当に見当をつけて(いい具合の所に出ました)。
時刻は夜の11時を過ぎました。日の入りは午後10時半ごろだったので、街は薄暗くなっています。それでも、日本と違う素敵な街並みが僕の心を捉えるのに、時間は掛かりませんでした。よーし。あしたから心行くまで歩き回ってみるぞー。

ホステルのある Långholmen島は、全体が公園のようになっていて、普通の家はそんなに有りません。
案内板が親切にも沢山あるので、迷うことなくホステルへ辿り着けました。

正面入り口から入り、フロントへ。僕の前に何やら係の人と話をしている方がいて、少し待ちました。そして、いよいよ緊張の一瞬。フロントの可愛らしいお姉さんに、名前と、今日・明日の夜に予約してある旨を告げます。多分、とんでもない言い方をしていたと思いますが、最終的には通じたみたい。コンピューターの端末をカチャカチャいじくったあと、“Oh. Welcome.” と言ってもらえました。はー、良かった良かった。
その後、11時過ぎなんていう時刻に飛び込んだせいでしょうか、手続きを終えて料金を払って部屋へ向かえるようになるまでに少々時間が掛かりましたが、シーツも借りて、朝食券も貰って、カギも受け取って、部屋に行くことが出来ました。色んな事を質問されたり説明されたりしました。そのたんびに、こっちが分かったような分からないような顔をしているので(なにせ、半分しか聞き取れてませんから)、身振りも交えて丁寧にお話してくれました。どうもありがとうございます。

2泊。朝食付き、シーツを借りて、500kr。6000円弱でしょうか。

部屋に入ると真っ暗で、同室の人は すでにお休みになっていました。なるべく騒々しい音は立てないように、二段ベッドの上段へもぐりこみ、この日は就寝しました。


出発前← | →2日目


home


written by tardy@k.email.ne.jp