小ぢんまりした食堂で朝食を済ませ、中央駅へ向かいました。
今日は、「郊外電車」というヤツに乗って、市街地から離れた所へ行ってみようと思っていたのです。
昨日購入しておいた Stockholmskortet (The Stockholm card) の出番でございます。
(↑使い始めの日時「6月27日 10時30分」が記入されています)
ストックホルム都市交通:Stockholms Lokaltrafik (SL) の運行する地下鉄、バス、郊外電車、が乗り放題。博物館や宮殿など70ほどの施設の入場料が無料。などなど、数々の特典が得られます。ストックホルム市内を巡るんだったら、手に入れておいて損はないカードです。市内の観光案内所などで購入できます。
無料とか割引とかの金銭的なことより、いちいちお金を払う手間が省けることの方が、僕にとっては大きかったです。
(ただ、後にチョコっと書きますが、鉄道にしろ博物館にしろ、全般的に入り口でのチェックは大甘です。インチキをしようと思えば いくらでも出来ます。でも、こんな所で日本人の恥さらしになるのは、よした方がいいですよね)
日本に絵葉書を出そうと、郵便局を探してさまよったりしているうちに、午前10時になっていました。
駅に入り、案内表示に従ってホームへ(ちょっと迷う)。改札口の係員の方に、カードの使用開始日時を記入してもらいます(カードを買った時、自分で書いてはダメですと念を押されていました)。この時点から、24時間後まで有効となります。この24時間券のお値段、220kr也(このほか、48時間券と72時間券があります。値段はそれぞれ、380krと540kr)。
ホームに行くと、一応、時刻表の類はあったので、それで乗りたい電車を確かめました。Nynäshamn という街まで乗って行ってみようと、漠然と考えていました。郊外電車の南端の終点で、ここには Gotland へのフェリー発着場もあります。今度のための予習も兼ねられるし、それに、バルト海を眺めてみたいという希望もあったし。
お目当ての Nynäshamn 方面行きが到着し、早速、乗り込みました。青い車体の、ちょっと古めの電車です。この時刻、乗客の数はあまり多くなく、ゆったりと座れるようです。
席について発車を待っていると、一人の男性が話し掛けて来ました。喋っている言葉はスウェーデン語みたいですが、どうも、北欧系の人ではなさそうです。よくよく聞いていると、言葉の端に この電車の終点の駅の名前が出てきたのが分かりました。どうやら、間違えた電車に乗ってるんじゃないかと心配して頂けたみたいです。僕みたいな旅行者が こんな電車に乗っているのは珍しいものと見えます。あ、僕はそこへ行きたいんですと言うと、安心した様子で向こうの方の座席へ行かれました。
やがて発車時刻になり、走り出します。
窓の外には、もう すっかり僕の頭を虜にした街並みが流れて行きます。そして、何度かトンネルを出たり入ったりしているうちに、風景には緑が増えてきました。郊外の風景もまた、日本とは一味も二味も違っていて、窓の外をきょろきょろと見ています。
しばらく走って、Farsta strand という駅に到着しようという頃でした。車内放送がありました。こちらでは、車内放送は ほとんどされないので、へー珍しいな、とか思って聞いていました。当然、何を言っているのかは、一言も分かっていません。
と、僕のすぐそばに座っていた老婦人が やおらこちらを向いて、次の駅から先はバスに乗り換えなきゃいけないですよ、と教えてくれました。どうやら、何かトラブルがあったようで、この電車の運転は打ち切りになるみたいです。あやや。
「郊外電車で終点まで行こう」計画は、こういったような訳で、あっさりと挫折してしまいました。
(↑バス停には、かなりの行列が)
なんか、カクンと拍子抜けしてしまいました。が、抜けていても仕方がないので、Farsta Strand の駅の周辺を歩き回ってみました。この辺りは、住宅団地になっていて、マンション(と言っちゃって良いでしょう)が建ち並んでいます。ストックホルムの中心街とはまた違った雰囲気です(東京で言うなら、光が丘を小さくしたような感じ、ですかね)。
で、ここに地下鉄の終点を見付けました。どうも、ストックホルムから離れるなと天の声に言われてる気がしまして、これで戻ってみることに決めました。
Farsta Strand の地下鉄駅は地下にありましたが、出発してしばらくすると地上に出ました。地下鉄は、中心街では文字通り地下に潜っていますが、郊外では地上を走っている事が分かりました。
戻っていく途中、Tallkrogen という駅で降りてみました。なんということはない、普通の駅ですが、窓から見えた住宅街を、ちょっと歩いてみたくなりました。
平屋の家が建ち並ぶ風景は、アメリカのどこかを思わせもします(行ったことないけど)。
静かで、落ち着いたところでした。周りの木々が、あまり手を掛けられずに放っとかれているみたいで、自然と共存しようという人々の姿勢が、ここでも見えた気がしました。
(↑Skanstull駅の南側。地下鉄が地上に出て橋を渡るところ)
結局、早々に中心街に帰って来てしまいました。
というわけで、今日が街中をうろつける最後の日でもありますし、少し買い物でもしようと思いました。
まずは、レコード店 MeGA Skivakademien へ。地元のCDを買い漁ってみたくて。
ビルの地下にあるため見付けるのに少し手間取りましたが、なんとか店に行くことが出来ました。
地下一階と二階にまたがって、売り場が広がっています。店内は、なんとなく日本のHMVの店舗に雰囲気が似てるような気もしました。ただ、カフェテリアが中にあったりするのは、こちらならでは。そして、アナログのレコードやビデオテープのディスプレイの仕方にも、個性を感じます。
書物によれば「北欧最大」の店らしいんですが、それが この規模ですと ちょっと淋しいような気がします。
スウェーデンのアーティストの作品を探します。できれば、スウェーデン語で唄ってる人のがいいな。
まずは、Cajsa Stina Åkerström のアルバム。さすがに地元。けっこう揃っていました。1994年のセルフタイトルのヤツと、1998年の ”Cirklar” を手に取ります。
Lisa Ekdahl も沢山ありますね。でも、この人のCDは 日本で いくらでも手に入るから いいや。
あとは、適当に探します。Olle Ljungström の ”En apa som liknar dig”、Stefan Sundström の ”Fisk i en skål”。ありゃ、気が付いたら 〜ström って苗字の人ばっかだ。
民族音楽みたいなのはないのかな。
それらしきコーナーに行って、Hulling というグループの ”Hårdhajen”、それから、Mats Berglund med Göran Håkansson, Fredrik Lundberg och Anders Nordlöf という長いクレジットの人たちの ”Gränslandslåtar” を選んでみました。
あと、ナチュラルサウンドというか、生録音のCDを二枚。
ストックホルム市内の色んな所で音をとった “The Sounds of Stockholm” というCD(かなりの枚数 置いてありました)。それから、”Havets Vågor” と題された 海の音を録音した作品を。
こんなところで。
レジに持ってったら、行列が出来ていました。Olle Ljungström のCDの値段を打つ際、係のお姉さんが どこかに電話で問い合わせをしてました。なんだったんでしょう?(その後、何か言われたんだけども、良く分かりませんでした。割引についてのことだったみたいなんですが)
CD一枚のお値段は、安いもので119kr、高いやつで199krでした。日本より、ほんの少し安めかも。
次に、その近くにあった Akademibokhandeln という本屋さんへ行きました。
お土産に 絵本を買って来てくれと、各方面から依頼があったもので。
お店の中は かなり余裕のある作りになっていて、(お客が少なかったせいもありますが)ゆっくりと品物を見ることが出来ました。漫画のコーナーが見当たりません。立ち読みをしている人も、僕が店にいた時はゼロでした。
でかいザックを背負った いい歳の外人の男が、絵本のコーナーで色々物色している様は、さぞかし滑稽に見えたことでしょう。
色んな国の人が描いた絵本が色々並んでいますが、ここでも、出来ることなら地元の作家さんの作品が欲しい。従って、John Burningham(イギリス) とか Peter Spier(オランダ) などの本は、残念ながら却下です。
しかし、スウェーデンの絵本作家の方なんてほとんど知りませんし、スウェーデンの人はこういう苗字や名前なんだという知識もほとんどないので、見付けるのは大変です。著作権表示の所を見て、その人なり会社なりがスウェーデンのものであることを目印にするしかない。悪戦苦闘の末、3冊を選び出しました。
(アルファベット順にストックホルムのいろんな事を描いた ”Stockholm ABC” っていう絵本がありまして、その中の、ストックホルムの街が見開きに大きく描かれたページの片隅に、稲光を発して雨を降らせる黒い雲が 小さく描いてありました。やはり、夏の夕立は、この街の風物詩みたいです)
レジに持っていくと、椅子に座っているお兄さんが応対してくれました。
これまで、どこに行っても、受付やレジでは英語で応対してもらえていました。先に書いたように、僕らは一目見て外人と分かりますから、45.00 とかレジに数字が出ると、すかさず “Forty five” と言ってくれるんですね。
しかし、ここのお兄さんにだけは、値段の読み上げから「本を入れる袋は、そこにあるのをお持ち下さい」(多分こんなことを言ったんだと思う)という説明まで、全てスウェーデン語で通されました。そりゃそうだ。文章がスウェーデン語で書かれた絵本を買ってる男が、まさか一言もスウェーデン語を理解できんとは思いませんわな。レジに出た数字と身振りと視線の方向から、推測するしかありませんでした。
さて午後になり、そろそろ夕立が来そうだなという時刻になりました。
また、雨宿りが出来そうな所に行くかと、ちょっと気になっていた博物館へ足を向けました。
音楽博物館:Musikmuseet です。
建物の写真を撮り忘れてしまったんですが、あまり大きくはありません。外には、ちょっとしたカフェがありました。
本来なら入場料が40krかかるのですが、Stockholmskortet のおかげでタダです。案内表示に従って入り口を見付けて中に入ると、受付がありました。ここでカードを見せるべきなんだろうなと思って準備したんですが、係の人は、こっちを見もせずに奥の方で仕事を続けています。いいのかな、いいのかな、と思いつつ展示室へ入ってしまいました。鉄道の改札といい施設の受付といい、お客の良心を かなり信頼しているみたいですね。
「音」についての物理的な説明の展示に始まって、いろんな楽器が手を触れられるようにして置いてあったり(ハープに初めて触った!)、いろんなセッションの楽器を比較展示してあったり(古い伝統音楽のグループから、ABBAまで)、不思議な電子音楽の空間があったり。展示スペースは少なめなのですが、僕には色々楽しめる所でした。
僕のほかには、一組のお父さんと息子さんが居るだけでした。係員の人も、暇そうだったかな。
ただ、ballad についての特別展示のコーナーは、ちょっと気味悪かったです。照明が暗くて、それぞれの部屋に入ると 突然 歌声が響いて来て。
公式サイト→www.musikmuseet.se
外に出ると、空は晴れていました。どうやら今日は、夕立にならないようです。でも、南の方を見ると、それらしい雲が広がっています。今日は、運良く、雨雲がストックホルム上空に来なかったのでしょう。
トイレ騒動 (4) − 個室の中にも洗面台が −
Musikmuseet の入り口近くにあるトイレ。
“大”部屋へ入ると、中には、便器と一緒に洗面台がありました。ユニットバスから風呂桶を取っ払った感じと言えば良いでしょうか。
だから、個室に やたら奥行きがあるんですね。
居心地がいいもので、必要以上に長居をしてしまいました。
「カクネス・タワー」とでも言ったら良いでしょうか。街の東の外れに建っている、高さ150mほどの電波塔です。
最後の午後に、ストックホルムの街を上から眺めてみたくなって、登ってみました。ここも、本来は入場料が25kr要るのですが、Stockholmskortet の特典でタダ(例によって、受付では何のチェックもされず、エレベーターに乗り込めました。こんなんでいいんか?)。
(左の写真が、中心部方面。ストックホルムには、中心部と言えど、背の高い建物がないことが お分かり頂けると思います)
とあるアパートメントの間に広がった緑地帯を歩いていると、見慣れた形の車が置いてありました。
欧米では、Vitara という名前で市販されてるんですよね。いや、それだけです。はい(こんなところで親近感を持ってしまいました)。
ホステルに戻り部屋のドアを開けると、東洋系の顔立ちと体格をした女性が! (このドアを開けた時は驚いてばっかです)
ありゃ、と思っていると、おずおずと「……日本の方ですか?」と、僕が唯一理解できる言語が その人の口から出て来ました。うわぁ。こんな所で日本人に会うとは思ってなかったよ。
最初は、このホステルに昨日の晩から泊まってるということで、僕からいろいろ教えていたのですが、あれこれ話すうち、この方は、とても僕なんか太刀打ちできないスゴい人だと分かってきました。
現在、オーストラリアのケアンズに住んでいて、仕事の休暇中だとか。なんと、4ヶ月かけてヨーロッパ各国を回るんだとのこと。今日は、フィンランドからのフェリーでストックホルム入りしたのだそうです(そう言えば、Kaknästornet から、それらしき名前の大きな船が見えました)。この後、ノルウェー・デンマーク・オランダ・フランス・ドイツ・スイス・イタリア……と回っていくつもりだと話してくれました(英語の通じない所に入ったらどうしよう、とか仰っていましたが、あの人なら全く問題ないでしょう)。
すごいですねー。僕が4ヶ月も旅行してたら、職場の机が無くなっちゃいますよ。ストックホルムに3日間いただけで日本に帰るんだと話したら、なんとも複雑な表情をされ、同情してくれました。
当然、英語は堪能で、同室のイギリス人青年(こちらも、スカンジナビアを股にかけて旅行しているツワモノ)にも気軽に話し掛けていらっしゃいました。僕は、脇で会話を聞きつつも、輪の中に入って行けなかったのでした(言ってる事は何となく分かるんだけど、喋れないからなぁ……)。
4ヶ月といいますから、彼女は、まだ、旅を続けているはずです。(8月8日記す)
(夜11時過ぎ、窓の外に見えた夕暮れの空。これが、最後の夜になります)
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